最初のブログ記事を執筆するにあたり、最新のテクノロジーやディープテックに焦点を当てようかと悩みました。しかし、私たち「自然とエネルギー」のテーマは“自然との共存”と“持続可能なエネルギー社会”です。広く深いこの分野の中で、最初に選んだのは バイオマス技術 です。
バイオマスとは何か?
「バイオマス(biomass)」とは、生物資源(bio)と質量(mass)を組み合わせた言葉で、再生可能な有機資源のこと。木材、稲わら、生ごみなど、生き物に由来するものが代表的です。エネルギー源や原材料として利用でき、太陽光・風力・水力・地熱と並ぶ“再生可能エネルギーの5本柱”のひとつに数えられています。
そもそもバイオマスという言葉は、生物学の分野で「ある生態系内の生物の総質量(living mass)」を指して使われたのが始まりだそうです。現在では、土壌・水・大気に含まれる生物由来の炭素の質量全体を示す概念として使われています。
化石燃料もバイオマスだった?
地下に眠る、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料も、もともとは何億年も前の生物の遺骸が変化したものだということ。つまり、化石燃料=超古代のバイオマスとも言えるのです。
では、なぜその化石燃料が環境破壊の象徴とされるのでしょうか?
それは、本来地中に数億年かけて固定されていた炭素(CO₂)を、わずか数百年で一気に燃やし、大気中に放出しているからです。現在の生態系は長い時間をかけて形成されたバランスの上に成り立っています。そのバランスが急激に崩されているのです。
この地下のバイオマスを地表に出さず、出来れは戻してやることが鍵になります。
温暖化の本当の問題は「熱」ではない
「地球温暖化」というと、燃料を燃やして地球が“熱くなる”イメージを持たれるかもしれません。しかし、問題は熱そのものではなく、熱を逃がさない温室効果ガスの存在です。
たとえばメタン(CH₄)は、CO₂の20倍以上の温室効果を持ちます。ただし、大気中での寿命は約12年と比較的短く、分解されると水とCO₂になります。CO₂はさらに長く、大気に残り続け、数百年単位で蓄積されていくのです。
バイオマスの循環をどう保つか
バイオマスは、もともと大気中のCO₂を取り込んで成長した生物がもとになっているため、燃やしてもCO₂の収支がゼロになるとされます。これは「カーボンニュートラル」の考え方です。
しかし実際には、バイオマスを集めて燃料に加工するための輸送や加工プロセスに、化石燃料由来のエネルギーが使われることもあります。
たとえば、トラックの燃料や加工工場の電力が火力発電によるものであれば、排出はプラスになります。
このように、バイオマス利用の真価は、その全体の排出バランスをどう評価し、改善していくかにかかっています。

Scope 1・2・3で見る責任ある削減
そこで重要になるのが、温室効果ガス排出量を3つの範囲で捉える「Scope(スコープ)」の考え方です。
- Scope 1:自社が直接排出する温室効果ガス(例:自社ボイラーからの排出)
- Scope 2:他社から購入したエネルギーの使用による間接排出(例:電力使用)
- Scope 3:取引先や運送業者など、サプライチェーン全体からの排出
この3つすべてに責任を持たなければ、真のゼロカーボンは達成できません。たとえ地上のバイオマスを使っても、他の工程で多くの温室効果ガスを出していれば、全体として排出は減らないのです。
ゼロカーボンのその先へ
もちろん、だからといって努力が無意味になるわけではありません。
これまでの人類活動には、多くの無責任なエネルギー利用がありました。これからは、一人ひとり、一社一社が責任を持った選択を重ねていくことが求められます。
さらに今後は、サステナブル・ゼロカーボンを超える**「リジェネラティブ(再生的)」な取り組み**、すなわちマイナスカーボンの技術や手法も生まれてくるでしょう。
私たちは、そうした新しい技術や挑戦を、丁寧に伝え、つなげていくことを目指します。

コメント
コメント一覧 (1件)
バイオマスとは自然の廃棄物燃料だけのことではなく、自然環境の炭素量のことなんですね