第10回 ZEFゼロエネルギーファーム解説① なぜ今、エネルギーを自給する農場が必要なのか

これまでの基礎解説シリーズでは、太陽光・蓄電池・エネファーム・CO₂回収・高断熱と、再エネを支える“部品”を一つずつ見てきました。バラバラに見ていたこれらのピースが、実は一枚の絵としてつながる場所があります。それが今回から3回にわたってお話しする ZEF(Zero Energy Farm/ゼロエネルギー・ファーム)、エネルギーを自給する農場です。

でもその前に。「なんでわざわざ農場でエネルギーの話を?」と思われた方も多いはずです。第1回は、その“なぜ”を一緒に確かめるところから始めましょう。結論から言うと――私たちはあまりにも長く、食べることと、エネルギーのことを、別々の財布で考えすぎてきたのです。

目次

1. 日本には“二つの自給率”がある

みなさんは自分の家計を考えるとき、「食費」と「光熱費」を別々に心配しますよね。実は国レベルでも同じで、日本はこの二つをどちらも“外注”に頼っています。数字で見てみましょう。

食料自給率はカロリーベースで38%(令和6年度・農林水産省)。お茶碗の中のごはん粒のうち、6割以上は外国の畑で穫れたもの、というイメージですね。一方のエネルギー自給率は約15%(経済産業省・2023年度)。これは原発再稼働と再エネ拡大で“震災以降では過去最高”の数字なのですが、裏を返せば、最高でもまだ8割以上を輸入に頼っている、ということでもあります。

食べ物もエネルギーも、その大半を「他人の蛇口」につないで暮らしている。これが私たちの足元です。蛇口の向こう側――産地の天候、為替、紛争、海運――で何かが起きるたびに、私たちの食卓と電気代は揺さぶられます。近年それを痛いほど実感した方も多いのではないでしょうか。

2. そこに重なる第三の不安 ― 畑が、天気に振り回される

「食料の6割を輸入してるなら、国産をもっと増やせばいいじゃないか」。まったくその通りです。ところが、その国産の畑そのものが、今いちばん不安定になっています。犯人は異常気象です。

2024年は、夏の猛暑と降水不足でキャベツが不作となり、価格は例年の3倍以上にまで跳ね上がりました(日本農業新聞ほか)。同じ年、「野菜の気になるニュース」の1位は野菜価格の高騰、2位は猛暑の影響だったそうです(タキイ種苗の調査)。猛暑、豪雨、寒波――こうした異常気象は、もはや“たまの災難”ではなく、毎年やってくる前提条件になりつつあります。

つまり私たちは、ただでさえ自給率の低い食料を、年々あてにならなくなる露地(屋外)の畑で支えようとしている。土俵そのものがぬかるんできているわけです。

食料は他人任せ、エネルギーも他人任せ、頼みの国産畑は天気任せ。三つの不安が、いま同時に進んでいます。

3. 「じゃあ室内で作ればいい」…の落とし穴

天気に振り回されるなら、天気の影響を受けない室内で作ればいい。そう、植物工場です。温度も光もコントロールでき、天候に関係なく安定して野菜が穫れる。まさに救世主……のはずでした。

ところが現実は厳しく、国内の植物工場はおよそ半数が赤字と言われています(AGRI JOURNALほか)。とくに人工光だけで育てるタイプや、小規模な施設ほど赤字率が高い。理由ははっきりしています。電気代をはじめとするエネルギーコストと、高い初期投資です。光も空調も電気で動かす植物工場にとって、電気代の高騰はそのまま経営の急所になります。

実際、かつて日産18トン・売上19億円という大規模な植物工場が、電気代の高騰と過大な設備投資、そして「一般品の2倍の値段」を正当化しきれない販路の弱さが重なって、2024年に経営破綻に至りました。天候のリスクは避けられても、今度はエネルギーのリスクに足をすくわれてしまったのです。

ここに、これまでの“天気 vs 室内”という発想の限界が見えてきます。露地は天気に弱く、植物工場はエネルギーに弱い。私たちは不安を一つ消すたびに、別の不安を抱え込んでいたのです。

4. 足りなかったのは「エネルギーを自給する」という発想

では、どうすればいいのか。答えはシンプルです。植物工場の弱点であるエネルギーを、その場で自給してしまえばいい。電気代に怯えるのではなく、太陽光と蓄電池で電気をつくり、貯め、施設の中で循環させる。捨てていた熱もCO₂も水も拾い直して、まるごと一つの循環にする。

これが、私たちの考えるZEF(ゼロエネルギー・ファーム)です。食料自給とエネルギー自給を、別々の財布ではなくひとつの仕組みの中で同時に解くという発想の転換です。これまで基礎解説シリーズで一つずつ見てきた太陽光・蓄電池・エネファーム・CO₂・断熱の技術が、ここでようやく一枚の絵に集まります。

そしてこれは、単なる“儲かる農場”の話ではありません。天候に左右されず、電気代に怯えず、災害で送電網が切れても自分で立っていられる農場。それは、食料安全保障とエネルギー安全保障、さらには防災の備えを、地域の足元から同時に強くする取り組みでもあるのです。私たち自然とエネルギーが、いま最も力を注ぎたいテーマです。

次回予告:「エネルギーを自給する農場」と言うのは簡単ですが、それを本当に成り立たせるには、捨てていたものを全部つなぐ“からくり”が要ります。太陽光・蓄電池・燃料電池のトリジェネ、魔法瓶のような高断熱、CO₂と水と熱の循環――バラバラだった部品が一つの“代謝する身体”になる瞬間を、次回じっくり解剖します。露地に比べてどれだけの密度で、どれだけ環境負荷を抑えて作れるのか。その数字もお見せします。お楽しみに!!

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自然とエネルギー

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この記事を書いた人

自然とエネルギーの代表取締役
20年にわたり1500件以上太陽光発電および蓄電池設備の施工を行い再エネ建築の最前線で活動してきました。
同時に、映像技術関連の業務を行い、動画写真撮影、イベントなどでの映像設備構築を行ってまいりました。

特にドローン等を用いた災害現場での映像情報の撮影活動も行い
2014年 Rescue3 (国際レスキュー資格)Technical Rope Rescue 山岳救助資格
2015年 Rescue3 Swiftwater Rescue 水難救助資格 取得

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