第9回 再エネ基礎解説 廃棄太陽光パネルが新たなエネルギー資源に、水素サプライチェーンの構築

目次

シリコンから生まれる低コスト水素と、地域型サプライチェーンの構築へ

太陽光発電の普及とともに、全国に設置されたパネルの「廃棄問題」が注目されています。2030年代以降、年間数十万〜数百万トンの廃棄パネルが発生すると言われ、“再エネの負の側面”として語られることも増えています。

現在廃パネルは年間5万トン程度だと言われており、適正なリサイクル施設に回される量は20%未満です。それ以外は建築廃材として埋め立てられているのが現状です。

生成AI画像

政府や自治体は各地に上記の生成画像のような廃棄物の山が現れる事を恐れています。

廃棄太陽光パネルはゴミ!? とんでもない!!宝の山だとご存じですか?

太陽光パネルリサイクルは次のパーツで構成されています。

1枚22kgの場合の重量を計算すると:

素材構成比1枚あたりの重量
ガラス76%16.72 kg
アルミニウム8%1.76 kg
1%0.22 kg
シリコン5%1.10 kg
ポリマー(EVA・バックシート等)10%2.20 kg
銀などその他金属0.1%0.022 kg(22g)

アルミやガラス、銅などは有価取引されますが、シリコン+銀+EVA樹脂バックシートは分離に手間がかかり、焼却されるか埋め立てられているのが現状です。(シリコンを剥がしたバックパネルもペレット状にすれば販売も可能です。)
この捨てられているシリコンシートにこそ、エネルギー資源の宝が隠されているのです。

太陽光パネル内部の結晶シリコンは99.9999%(6N)級の高純度です。この高純度のシリコンをバックシートから剥離する技術は工業化が始まっています。それを微細粉砕して、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムに漬ければ大量の水素を発生させることが出来ます。

シリコンから水素抽出 化学反応式

Si + 2OH⁻ + H₂O → SiO₃²⁻ (ケイ酸塩)+ 2H₂(水素)

水素生成量は非常に大きく、シリコン1kgで発生する水素は理論的に約1,300〜1,500L(1.3〜1.5m³)に達します。液化すると1/800になるので160g~180g程度です。

アルカリ溶液だけで作る水素は、ほぼグリーン水素(CO₂排出ゼロ)と言って良いでしょう。
確かにシリコンを作る段階で、中国では大量の電気を使ってパネルを作っています。しかしLCA(ライフサイクル評価)では、mono-Si モジュールの非再エネエネルギー・ペイバックタイム(NREPBT)は約1年(多結晶で1.2年)です。20年発電すれば20倍近いゼロカーボンエネルギーを作っていることになります。つまり中国で使ったグレーエネルギー製品を、日本で20倍のグリーンエネルギーで相殺したことになります。その役目を終えた出涸らし廃パネルを、さらに資源と水素エネルギーで再活用と言うことです。

※現在中国は急速に再エネ率を高め、化石燃料に置き換えています。近いうちに太陽光エネルギーで製造したシリコン型太陽光パネルが流通すれば、より完全に近いグリーンエネルギーとなるでしょう。

つまり太陽光パネルの製造に必要な電力コストと資源は全て中国に払ってもらい、安い価格で輸入し発電で元を取った後更に、大量の資源エネルギーを手に入れられると言うとても美味しい話なのです。

アルカリ反応方式の最大の特徴は、水素製造にほぼ電力が必要ない

水素製造の多くは、現在電気分解方式が主流なので大量の電力を消費し、その電気代で水素価格が高騰していることが問題で、水素インフラ普及を遅らせています。

シリコンをアルカリ反応させ水素を発生させた場合、現行の試験機(中央エンジニアリング社製)は20w程度
つまり電力をほとんど必要としない水素製造方式なのです。

さらに喜ばしい事に水素発生後のシリコンからは「ケイ酸塩(シリカ)」と言う副産物が生まれます。ケイ酸塩(シリカ)は水ガラスと呼ばれ、様々な用途で引く手あまたです。

  • 農業: ケイ酸塩は農作物のサプリメントとして活用され、特に稲作はケイ酸塩が重要で、光合成をアップさせ、茎を強くし、病害虫を防ぎ、収穫量と食味をアップさせる重要なアイテムです。
  • 建設業: 水ガラスは魔法の液体と言われ、コンクリートや木材に塗布することにより耐久性能を大幅にアップさせることで知られています。燃えず、腐食やシロアリを防ぎ、1000年もつ木材に生まれ変わらせ文化財の保護にも使われています。コンクリートの耐久性能をアップさせれば高速道路などのインフラの維持コストは大幅に下がり、建物の建て替えによるCO₂排出も大幅に減らすことが出来る。

アルカリ反応で水素を取り出した後のケイ酸塩は、なんとシリコンの元重量の4.35倍に膨れ上がります。

17万トンのパネルから生まれる「水素量」

2030年代半ばから日本で予測されている「年間約17万トン」という太陽光パネルの廃棄規模は、アルカリ反応方式による水素製造において極めて大きなポテンシャルを持っています。この17万トンの廃棄パネルを水素エネルギーに転換した場合の具体的規模感を算出すると以下のようになります。

太陽光パネルの総重量のうち、水素の原料となる「シリコン(電池セル)」の割合は約4%と想定します。

  • 回収できるシリコン: 17万トン × 4% = 約6,800トン
  • 生成される水素量: 6,800トン × 1,500L = 約102億リットル(約1,020万立方メートル)
  • 重量換算: 水素の重さにすると約91万kg(910トン)に相当します。

水素自動車(MIRAI)で何キロ走れるか?

トヨタ・ミライ(燃費 約148km/kg)で換算すると:

  • 総走行距離: 91万kg × 148km = 約1億3,468万キロ
  • 台数換算: 1台が年間1万km走ると仮定すると、約1万3,500台分の年間走行燃料を、廃棄パネルのリサイクルだけで賄える計算になります。
    これは、現在走行している全てのFC車の燃料全て(推定1万台)をまかなえることになります。

これは社会インフラとしては微々たる数字です。政府は2030年目標として80万台を掲げていますが、まだ車両価格が割高で、水素価格も高いことが足かせとなっています。しかし、廃パネル処理問題を解決しながら、先ずは水素製造価格が安いアルカリ生成水素を各自治体で活用し始め、リサイクルと水素インフラ拠点を各地で起ち上げて行く事で水素社会を築く起爆剤とすることが出来るのではないでしょうか。

現在メガソーラーの乱立の環境インパクトと二次災害が問題視されています。
もちろん我々自然とエネルギーは環境負荷を全く考慮しない、開発事業には断固反対です。
しかし太陽光発電自体が間違った事とは考えていません。今発電コストと維持コストが最も安いのは、
太陽光発電です。設置想定面積が狭い日本においても、化石燃料の発電コストを下回っています。
忘れてはならないのは、燃料が無尽蔵の太陽という事です。設置場所さえ正しく選べは最も環境負荷の低い発電であることには間違いありません。そして、この記事の通りパネルの廃棄問題もすでに解決の糸口が見えています。

更に別の恩恵も考えてみましょう。

6,800トンから生まれるケイ酸塩(水ガラス)

アルカリ反応で4.35倍に膨れ上がります。

  • 6,800t × 4.35 = 29,580t(乾燥重量)
  • 水ガラスに加工すると約8.5万トンに上ります。
  • 現時点で水ガラスの販売価格は1tあたり4万~7万が相場であり、8.5万tなら34億円から60億円になります。

この量のケイ酸塩を農業分野に活用すると、農地供給可能面積は約25,000ha(東京ドーム5,300個分)の稲を育てることが出来ます。ケイ酸塩は、光合成向上により茎を丈夫にするだけでなく、温度上昇に強い稲に育てます。ですから温暖化による高温障害、異常気象による嵐や台風などへの対策、加えていったん倒伏した稲の回復補助効果もあり、確実な収穫量の上昇と食味の向上も期待できます。まさに地球温暖化時代の救世主とも言えるのです。

利用価値・事業価値共に、水素以上のポテンシャルをもった副産物と言えるでしょう。

廃棄太陽光パネルは大きな資源

廃棄パネルはリサイクルすることによって、アルミフレーム、ガラス、銅や銀、バックパネル、そしてシリコン全てが活用可能な資源なのです。

ゴミと揶揄されてきた廃棄太陽光パネルの中のさらにゴミとされていたシリコンの処理に、アルカリ反応方式を導入することで、2030年以降、毎年の17万tもの新たな資源とエネルギーが生み出される油田のような存在となります。すぐに枯渇するどころか、2040年にはピークを迎え、年間40~80万tに増加し、2050年頃までは高止まりの状態が続くと言われています。埋め立て捨てるなんてもったいな過ぎると思いませんか!?

自然とエネルギーは提案します。

各地方自治体レベルで、太陽光パネルの

回収 → リサイクル解体 → 素材の抽出と加工 → 販売・活用

のサプライチェーンの構築を行うべきです。

これにより、撤去運搬のコストを大幅削減出来、これまでの埋め立てもしくは焼却の必要は無くなり、代わりに地域に大きな利益を生み出します。

ここで重要なのが、利用しやすい適正な金額設定です。私たちは「1枚3,000円」の廃棄受入手数料を提案します。一般家庭の屋根(10〜20枚程度)において、負担感を減らしつつ、施工業者が1件の撤去からリサイクル持ち込みまでを20万円以内で収め、かつ利益を出せる金額です。この適正な負担分担こそが、地方自治体が扱う公的制度として相応しく、補助金なしでも持続可能な形となると計算しました。

さらに、この低価格な設定は、次世代の国産パネルである「ペロブスカイト太陽電池」への載せ替えを強力に推進します。業者がリサイクル金額を負担して載せ替えを行い、数十年後にまた新しい技術へ更新する。この循環を生むためのハブとして、リサイクル施設が機能するのです。

地方自治体が年間5,000tの処理から販売までのサプライチェーンを持てば、次のような経済効果をシミュレーション出来ます。

1. 規模の前提条件

  • 年間5,000t受け入れ(17万tの約3%)
  • 処理枚数: 約22.7万枚(1枚22kg換算)
  • 想定設備: パネル解体ライン、シリコン粉砕機、アルカリ反応水素抽出プラント
  • エリア: 人口30万〜50万人程度の広域自治体、あるいは周辺自治体との連携拠点を想定

2. 年間推計収益シミュレーション(市場変動リスクを考慮した堅実モデル)

※将来的な資源飽和を考慮し、有価金属の売却益を直近相場より15%低く見積もっています。

収益源計算根拠年間推計売上
① 廃棄受入手数料3,000円(1枚)× 22.7万枚約 6.8 億円
② 有価金属売却益アルミ・銅・銀等(15%下落想定)約 7.1 億円
③ 水素販売・利用価値1kg(Si) → 1.5㎥生成 (100円/㎥)約 0.3 億円
④ ケイ酸塩販売益水ガラス原料・肥料として約 1.2 億円
合計(年間売上予測)約 15.4 億円

年間5,000tの廃棄パネルを処理できるサプライチェーンの構築で、2030年~2050年までに累計300億円を優に超える収益を得ながら、農業・建築・インフラに貢献でき、地球温暖化対策に貢献出来ることになります。仮にサプライチェーン構築に30億円かけたとしても、人件費等を差し引いても短期間で投資回収が可能であり、あとは多額の安定財源を得ることが出来ます。

まとめ 太陽光パネルはゴミではない!!地域の油田となれる

「年間17万トン」という膨大な廃棄物は、これまでは「負の遺産」でしたが、アルカリ反応方式を活用すれば、日本国内の水素自動車1万台以上を走らせる「国産エネルギー資源」へと変貌します。さらに副産物でさえゴミにはならず、貴重な肥料や、インフラの耐久性能を上げる救世主となるのです。

さらに、アルミや銅や銀、バックパネルの利益だけで、リサイクル施設の建設費を数年で回収し、それ以降は収益になり続ける。その経済効果は,年間総額523億円にのぼります。これはリサイクルと水素、ケイ酸塩事業だけで、インフラコスト削減や農業支援効果まで含めると更に利益は膨らみます。

自然とエネルギーはこのビジネスモデルを各地方自治体が行い、20年以上の安定財源とし地域活性の起爆剤として頂く事を提案いたします。そして、水素インフラ普及ハブステーションとして広げ、脱炭素社会構築の一助として頂く事を願います。

さらに2040年以降、その倍以上の廃棄太陽光パネルが資源として産出されていきます。47各都道府県が年間1万tの処理能力を持つ事が出来れば、2060年頃には日本の太陽光パネルが国産のペロブスカイトに置き換わり、核融合発電が実用化すれば、その無尽蔵の電力で水素やメタン、アンモニア等の次世代エネルギーやプラスチック等の資材を生み出し、化石燃料を一切使わない純国産エネルギーだけで日本全土をカバー出来ると言うのも夢物語ではありません。

ゴミを燃やす・埋めると言う発想は前世代の遺物に出来る時代が、今もう既に訪れています。
自然とエネルギーはこうした活動を応援いたします。

エネルギーを保持する高断熱の家、ウレタン断熱の老舗メーカーが生み出す新たな取り組みが脱炭素社会を推進する

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この記事を書いた人

自然とエネルギーの代表取締役
20年にわたり1500件以上太陽光発電および蓄電池設備の施工を行い再エネ建築の最前線で活動してきました。
同時に、映像技術関連の業務を行い、動画写真撮影、イベントなどでの映像設備構築を行ってまいりました。

特にドローン等を用いた災害現場での映像情報の撮影活動も行い
2014年 Rescue3 (国際レスキュー資格)Technical Rope Rescue 山岳救助資格
2015年 Rescue3 Swiftwater Rescue 水難救助資格 取得

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