取材ブログ記事 株式会社日本アクア
自然とエネルギーの西小路です。2025夏ジャパンビルド大阪のイベント会場に行ってきました。
場所はインテックス大阪です。新しい建設技術の数々が紹介されていました。
どのようなイベントになっているのでしょうか。建物の脱炭素EXPO GX Buildなど新たな風が吹いていました。
近年、建設業界も脱炭素技術やサービスが注目されており、いかにCO2を削減するかが競い合われています。
建設時いかにGHG温室効果ガスを出さないか、省エネや高気密、高断熱の住宅やビルを作れるかが建設業界の生き残りの鍵となっています。
高気密 高断熱の家がもたらす恩恵
読者の皆さんは、ウレタン断熱ってご存じでしょうか?
住宅の外壁の内側や屋根裏に発泡ウレタン剤を吹き付けて化学反応で泡状に膨らんだウレタン材がすぐに固まり断熱素材になります。固まった空気の細かな泡が、外気の気温から断熱し家の中を保温する技術です。細かな泡を隙間なく壁の中や屋根に吹き付ければ、空気も通さず高い気密性能も発揮します。
気密する事で、外の空気を遮断して、空気が窓や換気口からしか出入り出来ないようになっています。昔のように隙間風に凍えることはありません。
壁などは膨らんではみ出た分を平面に削り取り、壁板で蓋をすると高断熱と高気密性能を発揮します。
断熱と気密はしっかりすれば、家の中は魔法瓶のように長時間 冷めたり、温まったりしません。家がクーラーボックスのようになるという仕様です。
少しのエアコン稼働で快適に過ごせます。空調の電気代が驚くほど易くなります。
熱エネルギーを放出することなく無駄なく使いきれるかが、脱炭素社会の大きな課題の一つです。
今回インタビューさせて頂いた、日本アクアさんは、数あるウレタン断熱の最大手で新しい取り組みを幾つも生み出しておられます。
Youtube でも観れますが、記事でもご覧頂けます。
プラス、記事ではこの技術が、どれだけ素晴らしく、脱炭素社会にどのように役立つか深堀したいと思います。
日本アクア インタビュー
最初に紹介するのはNipponAQUAさんです。日本アクアといえば、吹き付けウレタン断熱の老舗メーカーです。
建物高気密・高断熱により、省エネや温室効果ガスの排出抑制が図られますが、建物の寿命を延ばす新しい技術も開発されたようです。
そのあたりを中心に話を聞いてみたいと思います。
西小路
では今日は日本アクアの石原さんにお話をお伺いしたいと思っています。よろしくお願いします。
NipponAQUAという会社というのはどういった会社なのでしょうか。
石原(日本アクア)
私どもは全国で断熱工事と防水工事を行っておりまして、原料の生産から施工までをメーカーの責任施工でやっている会社になります。
西小路
今回のアピールしたい商品というのは何かありますでしょうか。
石原
私どもが施工しております「アクアハジクン」という防水材を使った工法の一つで、「復元工法」という方法があります。
そういったものを今回PRのために出品しております。
西小路
この復元工法というのは何を復元させるんですか?
石原
老朽化したスレート屋根や板金屋根などに防水材を吹き付けることで、耐久性を高めて復元するという方法です。
西小路
改装工事なしで屋根が蘇るということでしょうか?
石原
そうですね。具体的な工法としては、老朽化した屋根の外側から断熱材を吹き付け、その上に防水材を吹き付けることで、断熱と防水の改修を同時に行えます。
西小路
古くなってもろくなった屋根も強度が戻るということですか?
石原
そうです。実証実験で約20%の強度が上がり、耐荷重が増すことが確認されています。
西小路
昔、私は古くなったスレート屋根に上って踏み抜いたことがありますが、これを塗っておけば私が乗っても大丈夫ということですね?
石原
吹き付けを行えば、耐荷重が100キロ以上増しますので、人が一人乗っても踏み抜くことはありません。
西小路
最近ダイエット頑張って70キロまで落としましたので、安心して屋根に登れます(笑)
石原
それは素晴らしいですね(笑)
西小路
耐久性が上がること以外に、他にどんな効果がありますか?
石原
厚生労働省が28度以下の作業環境を求めており、大企業ほどその対応を進めています。
その中で、操業を止めずに外から改修できる点が注目されています。
西小路
労働環境も改善され、エアコン代も安くなりますね。
石原
はい、私どもの試算では屋根裏の温度が20度下がり、体感温度は10度程度変わります。エアコン効率も上がります。
西小路
企業にとってもCO2削減に貢献できるということですね。
石原
はい、その通りです。この復元工法や断熱材の活用により、快適な住環境や作業環境を実現し、地球環境の保全にもつながります。
西小路
ビルの屋上のウレタン防水の床にも同じものが使えるのですか?
石原
この防水材の部分だけの施工で、ビルの屋上などにも使われています。
RC(鉄筋コンクリート造)の建物の屋上防水やバルコニー防水など、新築にも改修にも対応しています。
西小路
なるほど。このアクアハジクンという材料はどのような素材なのですか?
石原
アクアハジクンで作る樹脂は約2ミリの厚みで、「ポリウレア」と呼ばれる素材です。
日本ではまだあまり知られていませんが、アメリカやヨーロッパでは非常にポピュラーで、強度が高く、柔軟性にも優れているので柔らかいステンレスとも言われています。
西小路
地震が多く建物が揺れる日本にはぴったりですね。
石原
はい。地震などの揺れにも追従できる柔軟性があります。
吹き付け後20秒で硬化し、防水性はもちろん強さとしなやかさを兼ね備えた素材となっています。
西小路
スレート屋根や鉄板の波型など、凹凸のある場所でも施工できるのですか?
石原
はい。吹き付けによって凹凸のある面にも均一な防水膜を形成できます。
施工の自由度が非常に高いのが特徴です。
西小路
次に、アクアフォームについて教えてください。それはどのような商品ですか?
石原
アクアフォームは、吹き付けタイプの発泡ウレタン断熱材です。現場で壁や屋根に直接吹き付けて断熱施工を行います。
原料の製造から施工までを自社の責任施工で行っています。
西小路
では、NipponAQUAの社員や契約施工者が現場に入って直接吹き付けているのですね。
石原
はい、そうです。断熱施工によって住環境が大きく改善されます。
「人と地球に優しい住環境をつくることで社会に貢献する」という理念のもとに事業を展開しています。
西小路
住宅の断熱性能が上がると地球温暖化防止にもつながりますね。
石原
おっしゃる通りです。断熱等級という新しい基準も導入されていて、等級5が標準となり、6や7はより高性能な断熱仕様となっています。
西小路
ZEH(ゼロエネルギーハウス)についても触れられましたが、それとの関係は?
※ZEHは断熱等級5で実現できると言われていて、等級5あれば、太陽光発電の電力の使用と売電(余った電力を売った差額)でプラマイゼロの電気代で生活出来る家の事です。
その為には、省エネ家電の使用と、壁と屋根と窓の、気密と断熱が肝になり、断熱等級が更に高い家がこれから求められると言うのが対談の前提です。
石原
ZEHは、太陽光発電などで家のエネルギー収支を実質ゼロにする住宅です。
その実現には断熱性能が非常に重要で、「外皮平均熱貫流率(UA値)」を基準値以下に抑える必要があります。
西小路
等級6や7はヨーロッパの寒冷地並みの仕様とのことですが、日本でもそうした家が建てられているのですか?
石原
はい。付加断熱(外張り断熱と充填断熱の組み合わせ)によって、スウェーデンなどの極寒地レベルの住宅性能が実現可能です。
※外張り断熱は、外壁の外側に、厚さ5cmほどの発泡断熱プレートを貼り付け、その外側に、モトタルやサイディングなどの壁を貼り付ける2重断熱の工法です。
西小路
もうひとつ、アクアブローという商品についても教えてください。これは何かを再利用しているのですか?
石原
はい。アクアフォームを施工する際、内側に石膏ボードを貼るので、発泡ウレタンの一部を削る必要があります。
その削り取ったウレタン廃材を再利用して「アクアブロー」という商品にしています。
これは天井裏に敷き詰める断熱工事に使うもので、北海道や東北など寒冷地で多く採用されています。
西小路
なるほど。壁を形成する過程で生じた廃材を製品化し天井の断熱に活用しているのですね。
石原
その通りです。
本来であれば削り取ったウレタン廃材は産業廃棄物として工務店が処理しなければならないところを、私たちは環境省からリサイクルの「広域認定」を受け、合法的に自社で回収・再利用しています。
これにより、現場の処分費も削減でき、私たちはそれを新たな商品として販売できるというWin-Winの関係が成り立っています。
西小路
今後の展望や目標はありますか?
石原
私どもは断熱工事をメインにしてきた会社ですが、「人と地球に優しい住環境をつくることで社会に貢献する」という社訓があります。
復元工法を通じて、作業環境やエネルギー効率の改善を図り、社会に貢献したいと考えています。
西小路
まさに人と地球に優しい理念を実現されていますね。ますます広めていっていただきたい取り組みです。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
石原
ありがとうございました。
今回は日本アクアの3つの商品を取材しました。
アクアブロー

高強度のポリウレアを吹き付ける事で、建物の屋根や外壁の劣化をカバーし、耐久性を復元する効果を持っています。
建物の建て替えは、高い費用がかかるだけでなく、解体時の廃材の処理や、建築のエネルギーや建材の生産・輸送に多くのGHG温室効果ガスが排出されます。
建物を永く使う事が脱炭素への大きな貢献となるのです。
アクアフォーム

発泡ウレタン断熱 壁や屋根の内側を発泡性の断熱材で覆うことによって、家を魔法瓶のように保温・保冷出来ます。
家の中のエネルギーを放出しないことによって、空調代を削減できます。ZEH(ゼロエネルギーハウス)の家は、太陽光発電の電気のみで、空調・照明・生活全般のエネルギーをまかなう事が出来るゼロカーボンを家庭で実現できる理想の家です。
ZEHは断熱等級5以上が求められますが、
アクアフォームNEOと言う高性能な製品なら、その上の断熱等級6をカバー出来るようです。
専門的にはUA値(外皮平均熱貫流率)0.46以下にする必要があり、そのための十分な性能を持っているようです。
(UA値は窓やサッシ扉など全ての合計値なので総力戦になります)
等級6の家は高気密高断熱の建物が大前提となります。そこに、自然エネルギーの発電と蓄電が加わればゼロカーボンハウスも夢ではありません。
アクアブロー

アクアフォームを壁に吹き付けると、化学反応で膨らんで壁の厚(約100mm)みからはみ出るので、はみ出た分を削り取ります。削り取ったゴミは、建築廃材なので、工務店が責任を持って処理しなければならない法律があります。
日本アクア社は政府から広域認定の許可、つまり、日本中から出た工務店が処理すべきウレタン廃棄物を持って帰って再利用しても良いよと言う免許を持っているという事です。
その日本中からかけ集めたウレタンごみを再処理して、天井裏にシートをしいてその上に30cm以上積もらせ更に家の断熱性能を高めるという、極めてエコな断熱方法です。
もしウレタンごみが焼却処理されれば、CO₂を排出する事になりますから、このアクアブローは脱炭素に貢献しています。こう言った事を意識した商品が増えるといいですね。
https://www.n-aqua.jp/assets/pdf/business/catalog/naq_aquablow_pamphlet_202311_04.pdf
日本の電力需要の約3割は住宅の電力使用になります。その半分は空調に電力が使用されています。
もしZEH(ゼロエネルギー住宅)に置き換わっていけば、日本のエネルギー問題解決の大きな一助となるでしょう。そして石炭火力の依存度を下げ、GHG地球温暖化ガス排出削減に貢献出来ます。
更に断熱や遮熱技術は様々な用途で活用が可能です。
例えば輸送業界では生鮮食料品や鮮魚など運送中にも温度管理に電力を消費する分野
コンテナにアクアハジクンと断熱材を塗布し、内部にウレタン断熱処理を施せば温度管理を容易にします。
温度管理の必要なタンク車の液体輸送
さらに、農業関連でも、屋内型農業においては、断熱技術を導入する事により、栽培管理や頻度をコントロールしやすくなりエネルギーコストの低減を図ることが出来ます。
ZEF(ゼロエネルギー・ファーム)が実現すれば食糧問題の新たな可能性が生まれると思いませんか?
これからも脱炭素社会に貢献する、企業や団体の情報を数多くお届けいたします。
皆様の暮らしやお仕事に役立つ事を願っています。
動画はこちら
第8回 バイオマス基礎解説 バイオマス液体燃料が地球を救うヒーロー!?

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