第4回までバイオマスについてと、バイオマスエネルギーについて解説してきました。もう幾つかバイオマス燃料に付いて記事にしたかったのですが、その前に一つ再エネの基本的な問題について理解しておくと、この後の様々なエネルギーの課題が理解しやすくなり面白くなるので間に挟ませて頂きました。
嫌われる上司 再エネ!?
再エネの基本的な問題とは、一言でいうと「間が悪い!!」です。タイミングと量の間が悪い、会社の人間関係でも、間が悪い人とか空気の読めない人は信頼され難いものです。
お腹がすいてペコペコで弱っているときに、急ぎの仕事を放り込んでくる上司、
逆に、お腹いっぱいもうお開きにしたいって時に、遅れて現れ遠慮せずにジャンジャン食べなさいと言う上司、
嫌われますよね。なんで上司ばかりと思われるでしょうが、だいたい電気やエネルギーはお上である国が取り仕切って上から供給されるからです。
これまでは上司のトップである国(社長)のもとで供給する電力会社(部長)はちょうどよい間をよんでちょうどよい量の発電を行い電気を供給してきたのです。この日はこれくらい使うだろうと予測して発電量を決めています。空気をよむ達人なわけです電力会社は島耕作ばりの優秀でモテる部長さんですね。
そこに近年、社長のこねで、空気の読めない「間のわからない奴」がいきなり課長クラスで入って来ました。その課長は今どきのスッとしたお洒落な風なのですが、とにかく気まぐれで仕事しないでぼうっとしてるかと思えば、急にやる気になって働き部下に残業を強いてきます。最初はちょっとカッコ良かったので皆にちやほやされたのですが、最近ではその気まぐれな間の悪さに皆の人気も覚めてきました。やる気はあるんだけどな~と言う痛い奴あつかいされています。
もちろんお気付きだとおもいますが、その課長が再エネ発電です。

さんざんイジリ倒しましたが、私はガチの再エネ推進派です。再エネ業界の方々失礼いたしました私は敵ではありません!!。
ですが再エネ業界の方々の頭痛のたねだったのではないでしょうか。この課題を皆が理解するところから始めないと物事は進みません。
太陽の当たらない太陽光パネル
風の穏やかな時の風力発電
水不足の時の揚水力発電
人手不足の街で燃やすものがないバイオマス発電
電力が欲しい時に欲しいだけ働いてくれる訳ではありません。どれも自然からの供給なので人に合わせてくれるわけではないのです。
電力会社の優秀な部長島耕作も、社長の肝いりで入ってきた新人課長に振り回されています。
この再エネの間:タイミングと供給量の問題を解決が再エネ普及の最大の課題です。
この間さえコントロールして空気をよんでもらえれば、実は働き者で気のいい奴なんですよ再エネ君は!!と皆もわかっています。
送電網がボトルネック 再エネを阻む壁
解決するための一つの方法は、再エネ君の作った電気を遠くに送ることです。
再エネ開発が進み易いのは、人や会社の多い都市部ではなく、自然豊かで人の少ない地方が多いです、都市部では常に電気を必要としていますが、田舎は電気が余りがちです。じゃあ余った分を都市におくればいいじゃん!て考えそうなものですが、実際には田舎で作りすぎた電気は買ってもらえない抑制と呼ばれる問題が再エネ業者や自治体を悩ませています。
せっかく巨額の投資をして、発電設備を作ったのに作った電気が売れなくて、借金が返せないどころか維持費がかさんで借金がふえて破綻する事業が近年増えています。
都会に電気を送れない抑制の理由ってなに?
その理由の一つはズバリ田舎の細い送電網です。
送電線には次のような種類があります。
低圧電線 家庭用で100vと200v
高圧電線 大き目の電柱の上の方を走っているもの、工場・中規模ビルへの直接供給 6600v
特別高圧電線 変電所を行きかう鉄塔クラス 22000v~66000v
超高圧電線 大型変電所より前の最高電線網 送電線界のエリート 15.4万~50万v
都会に発電した電気を送るためには、送電線のエリートである、50万Vに昇圧(アップグレード)して超高圧電線に載せる必要があるのですが、大型発電所のない地方には太い超高圧送電線がありませんでした
加えてこれまで地方は消費しか想定されていないので、降圧:高圧→低圧の一方通行の設備しかありませんでした。これを解消するのに、地方にも超高圧送電網の建設と逆潮流可能な変電設備のリニューアルが必要でいま進められていますが、数千億円の予算と数十年単位の時間もかかるので、再エネ発電の普及のスピードに全然追いついていないのが実情です。

ですから、都会は電気は欲しいのに、地方の電力会社は売るすべが無いので、抑制をかけて買い取れません状態になっているのです。
電気の質(Power Quality)」の違いの問題
超高圧電線の中の電気は、精鋭のエリート部隊です。
訓練を受けた精鋭の軍隊で一糸乱れぬ行軍をしている様なものです。
一方再エネ発電の電気は、量も質もバラバラの混成の愚連隊ようなものです。
出身の違う様々な電気が交じり合うと安定性が乱れトラブルの原因になります

電気の質(Power Quality)の主な要素
電力系統で言う「電気の質」は、主に次のような要素で評価されます。
要素 | 説明 | 影響 |
周波数安定度 | 50Hz/60Hzが一定であること | 周波数変動は系統不安定や停電の原因 |
電圧安定度 | 電圧が規定範囲(±5%程度)で保たれること | 高すぎると機器損傷、低すぎると動作不良 |
波形歪み(高調波) | 正弦波からの乱れ(インバータで発生しやすい) | 機器の誤作動や発熱 |
瞬時電圧変動・フリッカー | 急な負荷変動による電圧揺らぎ | 照明ちらつきや機器誤作動 |
このように電気の質(Power Quality)は電力系統にとっては非常に重要です。
大型発電所から送られる超高圧の電気は、電圧も周波数も安定していて揺らがない
まさに電気界の精鋭エリート軍団です。
一方再エネの電気は次のような特徴を持っています。
再エネ発電の特徴

- インバータ(パワコン)経由で系統に連系
- 発電は天候依存で、出力が変動しやすい
- 慣性を持たない(回転体が小さい、または直流電源)
- 電圧・周波数の維持は系統側に依存
- 高調波・瞬時電圧変動が出やすい(特に分散小規模系統では顕著)
超高圧のエリート軍団からすれば、どこの馬の骨ともつかない、寄せ集めの田舎軍隊たちが加わると、全体の指揮が乱れ、規律正しい行軍(送電)が出来なくなることを嫌がっているのです。
地方の細い送電網と電気の質(Power Quality)この2つの問題が再エネ発電の普及を阻む大きな要因となっています。
それらを解決するための解決方法はズバリ貯めるです。
次回は貯める事のメリットと課題を解説したいと思います。
第4回「ごみ」からエネルギー?―バイオメタン発電の可能性と下水処理場の知られざる実力

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